空家特別控除の延長 | 誠和不動産販売株式会社
空家特別控除の延長
著:誠和不動産販売 2019年7月更新
本稿で何度もお伝えしている通り、居住用財産に係る特別控除のうち所謂「空家」の税制優遇措置が平成35年(2023年)12月31日まで延長されました。
従前の制度は、相続発生直前に被相続人が一人で住んでいることを前提としていたため適用出来るケースが限定的だったことが難点でしたが、平成31年4月1日より被相続人が老人ホーム等施設に入居していた場合も対象になっており、近年の時代により即した制度に変化しました。増え続ける空家への税制面からのアプローチであると同時に、堅調な不動産市況を勘案すると最も売却が利益となる時期であると言えるでしょう。
【 対象となる空家の要件 】 ※赤字が改正された部分です。
① 昭和56年5月31日以前に建築されたものであること(旧耐震基準で建築されたもの)。但し、区分所有建物は適用外。
② 相続の直前まで被相続人が居住していたこと。または、相続の直前において老人ホーム等施設に入居していた場合。
③ 相続発生時から譲渡までの間に賃貸などの事業に使用されていないこと。
④ 相続発生時から3年を経過する年の12月31日までに譲渡すること。
①の旧耐震基準の建物については、現行の耐震基準に適合させるよう耐震改修工事をするか、もしくは家屋を取り壊して更地にするかの2通りの方法があります。平成31年度の税制改正大綱では譲渡後の耐震改修工事・建物の解体を認める案が出されていましたが、結局は反映されませんでした。
今回の延長に伴って一番大きな改正があったのは②です。
親世代と同居・介護が当たり前だった時代はとうの昔に過ぎ去り、現在は高齢でひとりでの生活が困難になった際は老人ホーム等施設に入居することが一般的になっています。その実態に即した形で、平成31年4月1日以降の譲渡においては施設に入居していた場合でも、一定の要件を満たし空家だったことを証明する書類を提出することで制度の適用対象となるように改正されました。
空家であることを証する書類として一番有効なのは、電気・ガス・水道などライフラインの停止が確認出来るものです。
住まなくなった時期(ライフラインを停止した時期)と、下記の老人ホーム等施設へ入居する際の契約書や利用料金の支払い記録などがあれば、空家であることの立証としては十分でしょう。
また、本則では空家であることの判断基準として住民票の異動を挙げています。
住民票が老人ホーム等にあれば、空家であることと施設へ入居していることを同時に判断出来るため、異動している場合は手続きも幾分簡略になるかと思われます。住民票を異動していない場合は、入居の際の契約書や利用料金の支払い記録がそれを代替するものとして扱われます。
杓子定規な規定で被相続人の居住を判断していた旧基準と違い、改正された居住要件については個別性の高い事情があるため、被相続人の居住用家屋が空家か否かを判断する役所も運用はまだ手探りの段階のようです。
また、この空家特別控除は「相続」のみならず「遺贈」によって被相続人の居住用財産を取得した際にも適用出来ます。
相続が争続にならないように遺言書を作成する方も増えており、遺贈で不動産を取得するケースも増えてきました。空家の税制優遇では相続がフォーカスされる傾向にありますが、遺贈も同様に対象となることも覚えておきましょう。
空家の解消が遅々として進まない原因のひとつに、自己居住用では無い不動産の譲渡には税制優遇が無く、譲渡税が多大に課せられることが挙げられます。
空家特別控除を使うことで譲渡税の大幅な圧縮が期待できますが、「相続あるいは遺贈のあった日から3年を経過する年の12月31日まで」という期間の制限があるため、優遇措置を受けられるうちに行動に移したいものです。