民事執行法一部改正-令和2年4月1日施行- | 誠和不動産販売株式会社
民事執行法一部改正-令和2年4月1日施行-
著:金成明洋 2020年2月更新
1.はじめに
令和元年5月10日「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案」が国会を通過し、令和2年4月1日に施行されます。
不動産に関わる仕事をしていると、不良入居者に頭を悩ませるオーナー、退去させるにしても正当事由が必要であり、家賃滞納等の正当事由があったとしても、裁判手続きが必要であり、裁判で勝ったとしても素直に退去せず、強制執行手続きをするにしても多額の費用が必要であり、そこまでしてようやく立ち退かせても入居者に損害金の請求ができず・・・と過程、結果をたくさん見てきております。
今回は強制執行に関わる「民事執行法」の部分について掘り下げて解説いたします。
2.改正の背景
従前、民事執行法では、強制執行の際、対象となる相手方の財産の状況を確認するため、財産開示制度というものがありましたが、この同制度は、罰則(30万円以下の過料)の内容を含め、強制力に欠けており、実効性に乏しいとの指摘がありました。これを裏付けるように、平成15年に同制度が創設されてから年間1,000件前後と利用実績は低調でした。
●強制執行の申立てには、執行対象となる相手方の財産を特定することが必要
●平成15年に、相手方の財産に関する情報を相手方自身の陳述により取得する手続きとして「財産開示手続き」を創設 ⇒ 利用実績は低調
3.改正の概要
① 相手方以外の第三者からの情報取得手続きを新設
財産開示制度は、相手方から財産に関する情報を直接取得する制度でしたが、民事執行法の中に、第三者から相手方の財産に関する情報を取得する制度を創設することとなりました。これにより、一定の者は、一定の事柄について、公的な機関や金融機関等に対し、情報を提供することを命ずるよう、裁判所に申立てをできることになりました。
「銀行等の金融機関」から 〇預貯金債権 ○上場株式・国債等に関する情報
※金融機関は銀行、信金、労金、信組、農協、証券会社等
「登記所」から 〇土地・建物に関する情報
「市町村・日本年金機構等」から 〇給与債権(勤務先)に関する情報
※給与債権に関する情報取得手続きは、養育費等の債権や生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみが申立て可能
② 罰則の見直し
財産開示制度における罰則はあまりに軽微であるため、相手方に手続を遵守させる動機付けとなっていないとの批判があったところですが、改正により、これを6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金と改めました。
●現行制度では、相手方の不出頭や虚偽陳述に対する罰則(30万円以下の過料)が弱い
⇒ 不出頭等には刑事罰(6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金)による制裁を科して、手続きの実効性を向上させる。
4.最後に
民事執行法が改正されることによって、正しい人が泣き寝入りをしなくてはならないケースは減ると考えられます。
法施行は本年4月1日からとなりますが、ご興味をお持ちのお客様はお知り合いの弁護士にご確認下さい。もしくは当社の顧問弁護士をご紹介(初回相談料は無料)致しますので、お気兼ねなく金成までお問い合わせ下さい。