火災保険と地震保険 | 誠和不動産販売株式会社
火災保険と地震保険
著:誠和不動産販売 2020年3月更新
火災保険は一般常識になりつつある
住宅を購入する際、住宅ローンから融資を受けるにあたって『火災保険』に加入している方がほとんどだと思います。
あるいは、自宅を建築したときに加入した火災保険を何度か更新して長く加入されている方もいらっしゃることでしょう。
古くは縄文・弥生の時代から木材を主たる建築材としてきた日本人のDNAには、火災に対する恐怖・警戒が刻まれていると言っても過言ではありません。
少し古いデータですが、内閣府の試算に拠ると我が国の2015年度における火災保険加入率は約85%とされています。
全国世帯数【A】 54,171,475世帯
火災保険等件数合計【B】 46,104,965件(うち保険 26,235,875件)(うち共済 19,869,090件)
(火災保険等)世帯あたり加入件数 【B / A】 0.85件(機械的計算による推計値)
火災保険はあくまで保険にすぎないため、経済的に余力のある人や地域・建物等の特性によって入らない選択肢を取り得る人がいることを差し引いたとしても、全世帯の約85%という加入率は非常に高いと評することが出来ます。
余談ではありますが、かつて朝廷の都として栄華を誇った平城京や平安京、また時代が下って江戸の城下町などの街並みが碁盤の目状に整備されていたのは、万が一火災になった際道路で区切られた区画で延焼を食い止めることを目的としていました。
科学技術や建築建材が発展した現代においてもその思想は連綿と受け継がれており、戦後に立案された東京都における都市計画では、江戸城を中心に各方面へ放射状に伸びる主要街道を短絡して交差する計画道路が一定距離ごとに設けられました。
こうして見ると、東西に伸びる早稲田通り・青梅街道・五日市街道を、環七通り・高南通り・中杉通り・環八通りが南北に交差している様子が見て取れます。これら主要街道沿いの建築物を耐火建築物(鉄筋コンクリートなど)とすることで、火災が発生したとしても沿道の耐火建築物と道路を防火帯とすることで被害を抑える、これが都市計画に組み込まれたハード面での防災対策なのです。
(戦災の大きかった城東地域は復興の際に行政主導の道路・街区整備が行われましたが、比較的戦災の少なかった杉並区周辺は古い街並みが残ることとなり、結果的に防災上危険な街のまま今日に至ってしまったことは皮肉な話ではあります。)
さて、火災保険は加入が当たり前という認識になりつつありますが、近年にわかに脚光を浴びている『地震保険』について皆様はご存知でしょうか。
地震保険とは何か?
火災保険は、住宅内で発生した火災や近隣の火災からのもらい火による住宅の損傷に対して保険金が支払われます。
火災に限らず、落雷や風災(台風など)・雪害なども補償対象となり、また最近は豪雨や洪水による床上浸水に対する補償もオプション項目ではありますがメジャーなものになりました。
一方で、火災は火災でも『地震によって発生した火災』による被害は保証対象外となってしまうことは、火災保険への加入を検討する上で注意しなければならないポイントです。
思い返せば1994年の阪神大震災、そして2011年の東日本大震災のニュース映像で、壊滅した都市のあちこちから火災の煙が立ち上っていたのは記憶に新しいところではないでしょうか。地震や噴火、またそれらによって引き起こされる津波による建物の損害、そして地震や噴火を原因とする火災に対しては、地震保険に加入することで備える必要があります。
ちなみに、地震保険はそれ単独で加入することは出来ず、必ず火災保険とセットで加入しなければなりません。但し、必ずしも同時に加入しなければならないわけではなく、火災保険に加入しているのであればいつでも地震保険に加入することが出来ます。
また、保険期間は火災保険の最長10年間に対して地震保険は最長でも5年間となります。
こぼれ話
ユーラシアプレート・北アメリカプレート・太平洋プレート・フィリピン海プレートの4つがぶつかり合う真上に位置する我が国は、地震の影響・被害から逃れることは出来ません。
記憶に新しい東日本大震災の前年(2010年度)、最も大きな被害を受けた宮城県における地震保険の付帯率は68.7%でした(火災保険加入世帯に対する割合)。この年度の全国平均値が48.1%ですから、過去に地震や津波の被害を何度も受けてきた宮城県の高い防災意識が現れていることが見て取れます。
東日本大震災を挟んだ2012年度において、この割合はなんと83.5%にまで増加。以後今日に至るまで、宮城県の地震保険付帯率は他の追随を許さない全国トップです。また、同じく大きな被害を受けた福島県は2010年度に40.1%だった付帯率が、2012年度には64.8%まで急上昇しています。(東京都の地震保険付帯率は2010年度45.5%、2012年度53.9%、2018年度59.7%)
また、2016年に九州で史上初の同地点2回の震度7を観測した熊本地震では、前年の2015年度における熊本県の付帯率は63.8%でした。熊本城の天守閣損壊が大体的に取り上げられた震災を経て、2017年度の付帯率は77.5%まで増加しています。
かつて『関東大震災』がありました。
東京都における2018年度の付帯率は59.7%と、同年の全国平均65.2%を下回っています。
しかしながら数十年スパンで大震災に見舞われる我が国において、いつか来ると言われている『(仮称)南海トラフ地震』と無縁ではいられない地域に住むからには、地震保険への加入を是非ともお勧めします。
岩手県には、津波が到達したことのある地点に『此処より下に家を建てるな』という石碑があります。
爪痕の記憶はいずれ風化し、いつしか忘れられていくものですが、子孫を思って遺した石碑があれば、その記録は減衰しつつも世代を渡って伝承されるでしょう。都市化と人口流出入の激しい東京都にはもはやその記憶は残っておらず、我々は身じろぎひとつで震災を引き起こす土地に住まうことを、ともすれば忘却したまま日々を過ごしています。
時代を遡れば阪神大震災のあった1994年当時、地震保険の付帯率は全国平均で7%、大きな震災被害を受けた兵庫県に至っては僅かに2.9%でした。
『備えあれば憂いなし』という言葉は、日本という国がその長い歴史を積み重ねて遺した、形無き石碑なのです。
出典:損害保険料率算出機構