住宅ニーズと供給の変化 | 誠和不動産販売株式会社
住宅ニーズと供給の変化
著:誠和不動産販売 2020年10月更新
新型コロナの流行によって不動産市場はどのように変化したのか?
答えは『未だ道標は見ず』です。
コロナ禍において、我々の生活は新しい様式への変化を余儀なくされました。不動産の世界とて無縁ではいられません。
特にその大きな契機となったのは、『テレワーク(在宅勤務)』の普及であることは間違いないでしょう。
満員電車に代表される通勤時の密集を避けるべく始まったテレワークは、近年のITコミュニケーション技術の進化を背景に急速に普及しました。今日日インターネットは、世界のどこにいようが一瞬にして全ての情報にアクセスする手段として君臨しています。
メールも同様です。大本はサーバー上にある為、どのPC・端末を使おうが同じように受け取ることができ、そして発信することができます。通信販売の普及はコロナに先立ち、相応に以前より我々の消費行動の主要な選択肢たり得ています。
そう、『働く』ことにおいて、既にオフィスという空間に縛られる必要は無くなったのです。
特に東京都内において、これまでの住宅ニーズの上位を占めていた要素『駅チカ』は、通勤面に比重を置いたニーズでした。(副産物として生活利便性を上げることもできます)その面で、立地において優れるマンションは住宅市場を牽引する大役を担い続けてきました。
駅直結の大規模マンション開発は言うに及ばず、マンション開発においては如何に鉄道駅へのアクセスを良くするかを至上命題のようにしていた感があります。用地買収や開発にかかったコストはマンションの販売価格に反映されます。当然ながら価格にも限度というものはあり、では立地のメリットを得るために掛けたコストを何処で削るかと言えば、『広さ(専有面積)』を抑える方向へとシフトしていきました。
10年前と比較すると、70㎡台の供給が主流であることに変わりはありませんが、それ以上の専有面積の供給が極端に減っていることが見て取れます。
2010年頃までのマンションでは90㎡の間取りプランも珍しくなく、その頃は23区におけるマンションの平均専有面積は70㎡を上回っていました。
価格に占める用地コストが増えるほど、価格を同程度にするためには専有面積を抑える必要があります。
2007年前後の『ミニバブル』を契機に専有面積の縮小傾向は加速し、現在では平均で60㎡を割り込んでいることが読み取れます。
専有面積が狭くなれば部屋数が減り、核家族化しつつある東京都の住宅事情としてはそれでも満足とは言わないまでも妥協出来ていました。
その常態を大きく揺るがした事件が、このコロナ流行とそれに伴うテレワークの普及です。
① テレワークの導入によって、住宅探しにおける『通勤』≒駅チカの優先度が下がった
② 専有面積・部屋数の狭いマンションでは、満足にテレワーク用のスペースを確保することが困難
③ 多少立地が駅から離れても、同価格の戸建であれば+1部屋も十分に実現することが出来る
以上のことから、往時のように『駅チカマンションが最優』とは必ずしも言われなくなったと感じます。
駅から遠くとも、スーパーマーケットが近くにある・コンビニエンスストアが充実している等、生活利便性を重視するニーズが勝っているようです。
また、『3密』の象徴とも揶揄された満員電車を避けて自家用車による移動が増えたことも、なおさら駅チカに拘る必要性を薄れさせました。
不動産のニーズは時代によって変化します。
かつては住宅すごろくの『上がり』は<庭付き一戸建>だったものが、建築技術の進化や都心集中の流れから<駅チカマンション>に移り変わり、そして今また新たな潮流へと様変わりする瞬間を目の当たりにしているのかもしれません。