空家の固定資産税軽減特例が無くなるかもしれない | 誠和不動産販売株式会社
空家の固定資産税軽減特例が無くなるかもしれない
著:誠和不動産販売 2020年12月更新
毎年1月1日の所有者に課せられる固定資産税。
固定資産税の算定基準となる『固定資産税評価額』は、不動産の持つ適正な時価を求めるため、3年毎に評価額を見直すことになっています。前回の見直し(評価替え)は2018年度(平成30年度)に行われていて、いよいよ来年度(令和3年度)は、その3年に1度の評価替えが行われます。
さて、ここで固定資産税について簡単におさらいしておきましょう。
固定資産税・都市計画税の税率本則
● 固定資産税:固定資産税評価額の1.4%
● 都市計画税:固定資産税評価額の0.3%
上記の本則に基づいて毎年の納税額が決定されることになりますが、この固定資産税・都市計画税には土地に関して『小規模宅地の特例措置』があります。
小規模宅地の特例
● 固定資産税:土地200㎡までの部分は、評価額×1/6 (それを超える部分は評価額×1/3)
● 都市計画税:土地200㎡までの部分は、評価額×1/3 (それを超える部分は評価額×2/3)
この特例措置によって、納税額がかなり抑えられていることがわかります。
そして、この特定のポイントは『住宅1戸につき』という条件が付いていることです。言い替えると、土地の上に住宅が建っている必要があります。
神戸市の取り組み
この特例措置があるために、使われなくなった住宅(空家)の取り壊しが行われず、結果として我が国における空家の数は今日に至るまで増え続けています。2018年度における総住宅数に占める空家率は、13.6%(全国平均)と過去最高を更新しました。(東京23区内における空家率は10.4%)
この増加を続ける空家への対策として、兵庫県神戸市では来年度から『活用の見込みのない全ての空家』について、来年度から固定資産税の税制優遇を廃止する方針を固めたと報じられました。(出典:2020.10.30付SankeiBiz)
神戸市の空家率は13.1%(平成25年度)と全国平均を下回っていますが、ここまで思い切った取り組みに踏み込むあたりに、その本気度が伺えます。
平成27年に施行された『空家対策特別措置法』によって、地方自治体は放置すれば倒壊などの危険性があったり景観を著しく損なっている空家を『特定空家』に指定し、所有者への助言・勧告に加えて税制優遇の停止や行政代執行による強制解体も認められています。
神戸市の取り組みの背景には、空家には倒壊や火災(放火)の危険性が高く、特に平成7年の阪神淡路大震災とそれに伴う都市災害によって、その危険性を身を以て色濃く経験していることがあるのかもしれません。
活用の見込みが薄い空家はそれ自体が老朽化や損傷によって容易に倒壊する状態であり、一度震災や災害が起きれば都市災害を巻き起こす遠因にもなり得、また災害復旧の足枷にもなりかねません。
発生しうる被害や掛かるコストも含めて未然に防ぐ『防災』という観点からも、神戸市の取り組みは先駆けになるものと思われます。
この取り組みは、むしろ東京都において大きな効果を発揮するのではないでしょうか。
東京都の空家率は全国平均を下回っていますが、空家数は全国トップの約80万戸にも達します。
空家の税制優遇を廃止することで、短期的な視点では税収を増やすことができ、長期的には空家の有効活用や市場開放を促すことができ、結果的に都市(不動産)の活性化と防災対策にも寄与することになります。
勿論、彼我の都市規模には大きな差がありますから、先鞭をつけた神戸市のように機敏には動けないでしょう。
しかしながら、『所有者不明土地への対策:相続登記の義務化』と併せて、増え続ける空家対策の効果的な一手となることを期待したい取り組みです。
所有者の立場では、これを機に所有する空家の有効活用を検討してみては如何でしょうか。
今後、所有する『権利』に対して、維持管理を適切に行う『義務』も遅ればせながら正しく求められていく潮流は、今後より一層大きなものとなることは間違いありません。
不動産は、名前の通りであった流動性の無い固定資産から、運用を主眼に置く流動資産へと変わりつつあります。