特定空家の除却も進んでいる | 誠和不動産販売株式会社
特定空家の除却も進んでいる
著:誠和不動産販売 2021年1月更新
先月末に、国土交通省は「空家特別措置法」に基づいて地方公共団体が実施する施策等の施行状況について、調査結果を公表しました。
昨今増加の一途を辿る空家をどのように活用するか、その「空家等対策計画」の策定状況については、全国の地方公共団体(総数1741団体)の実に約69%に当たる1208の市区町村において策定済みとなっています。内訳を分析すると、やはり所謂「地方」と呼ばれる地域においては、この空家の増加は深刻且つ現実のものとして捉えられていることを反映するかのように、策定状況は高い割合になっています。
一方で、東京・神奈川・千葉・埼玉の「首都圏」においては、策定済みの市区町村の割合は50%前半から60%前半に留まっていて、未だ本腰を入れるには至っていない状況も見て取れます。
このあたりは、過疎化が進行し明確に「空家」と識別できる地方のそれと、実態は「空家」同然ながら都市に埋もれることで、一見すると空家か否かを判別することが難しい都市部の差異とも言えるかもしれません。
空家等対策計画の策定は、2020年度末には全国の約8割に当たる1373市区町村で策定される見通しとなっていて、今後より実効性のある政策となり空家等の不動産の活用に繋がることを期待したいものです。
なお、空家特別措置法に基づく「特定空家」に関する助言・勧告等の措置の累計は、
● 助言・指導:1万9,029件
● 勧告:1,351件
● 命令:150件
● 代執行:260件
となっています。
現在までに除却等の措置に至った「特定空家」の件数は約1万2000件に達していて、上記の助言・指導は一定の効果があったと評価できます。
ちなみに、2020年3月末時点で存在する「特定空家」を市区町村が把握している総数は約1万8000件です。
全国で879万戸を上回る空家の総数からすると、特定空家に指定されたものは僅かに0.2%相当と、まだまだ圧倒的に施行不足と言わざるを得ませんが、不動産が空家になる背景は千差万別、ひとつひとつで様々な状況・思惑が複雑に絡み合っていることを鑑みると、これが現実的なところなのかもしれません。
前回のコラムでお伝えしたように、神戸市は活用の見込みの無い空家に対し固定資産税の優遇措置を停止するなど、踏み込んだ政策に先鞭をつけました。
この潮流にどれほどの地方公共団体が追従するか、それは未知数ではありますが、我が国の不動産政策において潮目の変わるきっかけになることを期待したいものです。