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遺産分割協議の期限を10年とする民法改正

遺産分割協議の期限を10年とする民法改正
著:金成明洋  2018年12月更新

 

 

2018年10月1日「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会(有識者の他、最高裁判所、国土交通省、農林水産省、林野庁、財務省、法務省の各担当者が出席)」が開催され、2020年の通常国会に法務省から「遺産分割協議の期限を最長10年とする」民法改正案を提出すると一部マスコミから報じられました。

 

現行の民法では、相続が発生すると遺産分割協議を行って財産を分割することが出来ますが、期限の制限はありません。
遺産の分割がされるまでは遺産は相続人全員の共有(民法898条)となり、例えば不動産を売却しようとした場合、相続人全員の同意が必要となります。

 

このため、相続人の意見がまとまらなければ売却ができず、塩漬け状態となる不動産もたくさんあり、公共事業など優先度の高いものでも買収が進まず工事がストップしてしまうケースが出ていました。

 

そこで、この遺産共有を解消する方法として、研究会では次のような方策を提示しています。

 

 1.遺産分割の協議(合意)及び遺産分割の申し立ての期限は、相続開始時から10年とする

 

 2.相続開始から10年を経過するまでに、遺産分割の協議(合意)及び遺産分割の申立がない場合は、

   法定相続分(または指定相続分)に従って遺産の分割がされたものとみなす。

 

10年としたのは、債権の消滅時効や土地の取得時効が10年のため、これらとの整合性を取る意味合いがあります。
例えば、債務の存在を知らなかった相続人が10年経って債務を相続すると(相続する財産はプラスの財産ばかりではなく、夫妻も当然に相続財産となります)意図せざる不利益を被ることになってしまいます。
しかしこの場合、相続人は債務を相続した上で10年の消滅時効を援用すれば、その債務を履行する必要はなくなります。

 

また、10年の起算日を「相続の開始時(被相続人の死亡時・民法の882条)」としている点も重要です。
民法915条第1項では、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に、単純あるいは限定承認、もしくは相続放棄をしなければならないと規定しています。

 

この規定に合わせて、起算日を「自己のために相続の開始があったことを知った時」とすると、例えば相続財産である不動産を購入しようとする場面などでは、たとえ死亡から10年以上経過していても、取引の相手方にとっては遺産の分割がされたものとみなされているのかどうかが判断できないため、結果的に取引をすることができない事態が生じる可能性があり、法律関係の安定の観点から課題があると考えられます。

 

何れにしても、詳細はこれから煮詰めていくと思われますが、上記2点の方策が改正民法に反映されれば、遺産の分割について相続人が協議しない、あるいは協議がまとまらない場合であっても、被相続人の死亡後10年経てば自動的に法定相続分で遺産の分割があったとみなされます。※遺産分割の申立があった場合は除く

 

不動産業者としては、興味深い改正になりますので、今後の動向については、適宜コラムに記載していきたいと思います。

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