相続土地国庫帰属制度-令和5年4月27日施行- | 誠和不動産販売株式会社
相続土地国庫帰属制度-令和5年4月27日施行-
著:金成 明洋 2022年7月更新
著:金成 明洋 2022年7月更新
令和4年4月28日に「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が公布されました。
今回のコラムでは、相続土地国庫帰属法とはどのような法律なのか、この法律で何ができるようになるのかを解説します。
1. 相続土地国庫帰属法の概要
相続土地国庫帰属法とは「相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得したものが法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる制度」です。
つまり、この法律によって「相続で取得した土地は国に引き取ってもらうことができる」ようになります。近年は社会情勢の変化により、山間地など利用価値が低い土地を手放したいというケースも増えてきており、そのようなニーズに応える法律であるといえます。
2. 相続土地国庫帰属法と相続放棄・所有権放棄
相続では、現金や株などの資産のみならず借金などの負債も承継の対象となります。
つまり、親の借金を子が相続した場合は子に返済する義務が発生するということです。親の負債を相続したくない場合、相続放棄を行うことが考えられます。相続放棄を行うことによって、その相続人は初めから相続人ではなかったこととなるため、被相続人の資産及び負債を承継することはなくなります。
そして、相続放棄によって相続人が不在となった場合、相続財産は最終的には国庫に帰属することが民法に規定されています(民法959条)。相続土地国庫帰属法においても、土地が国庫に帰属するという点では同じです。しかし、相続土地国庫帰属法は民法第959条で規定されている相続財産の国庫への帰属と以下の点で異なります。
① 相続放棄を行う場合、資産及び負債の全ての相続を放棄する必要があり、不要な土地や負債のみを放棄することはできません。相続土地国庫帰属法は不要な土地のみを国庫に帰属させることが可能です。
② 相続放棄は原則、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行わなければなりません(民法915条)。相続土地国庫帰属法ではそのような期間の制限はないので、いつ相続した土地についても国庫に帰属させることが可能です。
③ 現在は土地所有権を放棄するような規定がありません。今回の民法改正でも議論に上がりましたが、この相続土地国庫帰属制度が創設されたことにより、民法に所有権放棄に関する新たな規定は設けないことになりました。
3. 相続土地国庫帰属法の対象
3ー1. 対象物件の条件変更
土地の取得理由が「相続又は遺贈により取得した土地のみ」が対象となります。
売買など自ら積極的に取得した土地については国庫帰属の承認申請をすることができません。ただ、土地が共有に属していた場合、共有者の一人でも相続及び遺贈によって当該土地の持分を取得していた場合には承認申請が可能です。
3ー2. 対象となる土地
以下の何れにも該当しないことが要件となります。
① 建物の存する土地
② 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③ 道路その他の他人による使用が予定されてる土地
④ 土壌汚染対策法第2条1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
⑤ 境界が明らかでない土地、所有権の帰属又は範囲について争いがある土地
⑥ 崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要する土地
⑦ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有害物が地上に存する土地
⑧ 除却しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
⑨ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地
⑩ 1から9までに掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
要約すると、管理することができないもしくは管理に過分な費用や労力がかかる場合には、国は申請を却下することができるという事です。
また要件を整えるためには、建物の解体、樹木の伐採、敷地の測量と数百万円の費用がかかります。
3ー3. 管理費の納付
相続土地の国庫への帰属が認められると、10年分の管理に要する費用の納付が必要です。
現時点で詳細は定められていませんが、粗放的な管理で足りる原野で20万円、市街地の宅地で80万円ほどと言われています。
4. まとめ
創設された相続土地国庫帰属制度ですが、承認要件のハードルが高く、土地を手放したいと考えている人も、申請を躊躇することが想定されます。
相続などで不要な土地を取得した方は、条文附則で「施行後5年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とされているため、5年後に期待することも一考かもしれません。
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