民法改正が不動産賃貸に与える影響は? | 誠和不動産販売株式会社
民法改正が不動産賃貸に与える影響は?
著:金成明洋 2015年5月更新
著:金成明洋 2015年5月更新
「120年ぶりに民法改正」とメデイアを賑わせており、既にご存知の方も多いと思われますが、民法改正案が3月31日に閣議決定され今国会に提出される予定となりましたので、このタイミングでこの度の民法改正が不動産にどの様な影響を与えるのか検証してみたいと思います。
なお、余談ですが民法が制定されたのは1896年(明治29年)、施行されたのが1898年(明治31年)となり、正に120年近い月日が経過しておりますが、その間部分的な改正のみで、この度のような抜本的な改正はありませんでした。
民法は我々の生活に一番密接に関連する法律だけに、この度の改正は評価に値すると思います。
① わかりやすい民法にすること
判例を十分に理解している人間でなければ民法が使えないというのは問題であり、判例法理等を明文化して、我々国民にとって民法を分かりやすいものにする意図があります。
② 一般的に使われている用語で条文を構成する
現在の民法の条文は俳句のように短く、「危険負担」や「瑕疵担保責任」など、一般には使われていない用語も多用されており、我々国民に理解されにくく、契約が有効かどうかも民法の最初の「総則」と真ん中あたりにある「債権総論」や「債権各論」を読まないとわからないため、条文のあり方も改正される予定です。
③ 現実社会・経済活動の変化への対応
たとえば、市場金利とかけはなれた法定利率(民事は年5分、あるいは商事は年6分)により、裁判に負けると銀行金利以上の利息を支払うことになり、現実の経済活動への弊害も生じています。このように明らかに改正が必要な規定が取り残されることがないよう、見直しが行われる予定です。
不動産賃貸契約の場合
① 敷金と原状回復について
敷金に関しては民法に規定がなく、返還を巡るトラブルが多く発生し、多い時には年間1万件以上の相談が国民生活センターに寄せられていたようです。
この度の改正で敷金の定義を「賃料の担保」とし、返還時期を「賃貸物件の返還を受けたとき」と明文化されました。
原状回復については「経年劣化による傷みを借主が元に戻す義務がない」と明記される予定です。
② 賃貸契約の連帯保証について
保証人を保護するという観点から、次のような義務が導入される見込みです。
1. 極度額設定の義務化
保証人が個人の場合、「滞納があった場合に極度額60万円の範囲内で保証する」など具体的な金額の記載が
必要となる見込みです。
2. 情報提供義務
(契約締結時)
事務所など事業のために借りる人から保証人になることを頼まれて保証する場合は、契約を締結するときに、
本人(実際に借りる企業や人)の財務状況を確認しておくことが義務化される予定です。
(契約期間中)
委託を受けた保証人から請求があった場合に、債権者が、主たる債務の履行状況等について情報を提供する
義務を負うことになりそうです。
③ 賃借人の修繕する権利について
賃貸人は修繕義務を負うという規律は現行法でも存在しますが、賃借人が「修繕してもいい」とは書かれておらず、賃借人が「必要費を支出したときは、賃貸人に対し、償還請求ができる」と明記されています。
改正案では「賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、賃借人は、自ら賃借物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる」とされ、賃借人の修繕権限が明文化されています。
改正の時期と流れ
法律が改正されて効力が生じるまでの手続きは以下のような流れになります。
今回の民法の改正案は、2015年3月31日に閣議決定され今国会に提出され、2018年を目処に施行される予定です。
現時点では政権が安定しているため予定通り来年には施行されると思われます。
改正法はいつから効力を生じるか
上記の6.の段階、つまり国会で可決されれば、法律として成立することにはなりますが、その段階ではまだ法律として効力は生じません。
法律が効力を有するには法律として成立した後、公布(こうふ)されて施行(しこう)される必要があります。
公布とは、成立した法律の内容を一般に周知させることをいい、具体的には官報(かんぽう)に掲載されることをいいます。
そして公布された後に施行されてはじめて法律として効力が生じます。
施行とは、法律を発効させることをいいます。
これがいつになるのかは、改正法の附則(付随的なことを定めたもの)で決められます。
民法の改正が我々国民に効力を生じるのは、現段階では2018年以降になると思われます。
最後に
この度の民法改正で少なからず従来のやり方や書式では対応できない部分が出てまいります。
我々不動産業界としても今後の進捗を注視しながら変更を加えていかなくてはと思います。
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