相続税対策「タワーマンション節税」は間もなく終わり | 誠和不動産販売株式会社
相続税対策「タワーマンション節税」は間もなく終わり
著:金成明洋 2016年12月更新
2015年から相続税が増税されたこともあり、相続税対策として「タワーマンション節税」が一世を風靡しています。そもそもタワーマンション節税とは…から説明いたします。
一般的にタワーマンションは、眺望が良い高層階に行くほど価格が高い傾向にあります。
同じ面積でも、低層階の数倍になることもあります。しかし、相続税の算定基準となる「評価額」は階層や日当たりの条件によって差がつかず一律となっています。
なぜなら、現在はマンション1棟全体の評価額を各戸の所有者がそれぞれの床面積で均等に分割しているからです。
国税庁が昨年11月から、2011~2013年分確定申告のうち全国の20階以上のマンションの譲渡(=売却)があった住戸343物件を調べたところ、評価額は平均すると市場価格の3分の1にとどまっていました。
言い換えると、売却金額が評価額の約3.0倍で、最大で約6.9倍のケースもあったようです。つまり、超高層部の部屋を買えば現金で相続する場合よりも相続税を減らせることが多いということです。
例えば、現金1億円を相続すれば、(財産額から差し引ける非課税枠(基礎控除)などを考慮しない単純計算の場合で)税率30%相当、3,000万円の税金がかかります。一方、1億円でタワーマンションを購入すれば課税上の評価額が数分の1ほどに小さくなります。
評価額が3,000万円なら相続税は15%相当の450万円ですみます。
これがタワーマンション節税の仕組みです。
加えて、タワーマンションの場合、限られた敷地(土地)に家の戸数が何百戸もあり、1戸あたりの土地の所有持分が小さくなります。そのため相続税評価額も小さくなるというわけです。
上記のような流れもあり、タワーマンション節税人気に火がついた形です。
以上の解説のとおり、タワーマンションを購入するだけで大幅な相続税節税となるこの仕組みに、国税庁がメスを入れようとしています。
実際の物件価格に合わせ、階によって評価額を増減するよう計算方法を見直し、具体的な増減幅は今後詰められます。高層マンションの20階は1階の10%増し、30階は20%増しといった形で一定の補正を行う案が有力です。
市場価格1億円の高層マンションを相続すると、3,000万円だった評価額が省令改正で4,000万円に上がるケースも考えられます。
これまで3,000万円に税率15%をかけた450万円の税負担で済んだものが4,000万円に20%をかけた800万円に増えるというわけです。
※日本経済新聞引用
加えて、今回の見直しで評価額に対し毎年1.4%の税率がかかる固定資産税も、高層階の税負担が増える見込みです。(固定資産税も相続税と同じ考え方で、低層階・高層階関係なくマンション全体の固定資産税額を床面積の割合で按分し課税されています)
今後は今までのようにタワーマンション人気が続くかどうかは疑問がありますが、節税についてどうなるかわからないという不透明感はタワーマンション販売には逆風になります。
ただ、逆にタワーマンションの低層階は今までより人気が出ると思われます。上記の相続税評価が下がるという理由もありますが、タワーマンションは駅に近い、もしくは駅直結の物件が多く、今まで戸建に住んでいた年配層が老後に備え、駅に近い便利な場所のマンションを購入したいという需要が大きくなってきているからです。タワーマンション節税の今後の動きには注意が必要です。