長屋のメリット・デメリット | 誠和不動産販売株式会社
長屋のメリット・デメリット
著:誠和不動産販売 2019年9月更新
「長屋」と聞くと、古い邦画に出てくる、平屋づくり住居群を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし近年、長屋は不動産業界の専門用語となりつつあり「共用部がなく、入口が各部屋に直接つながっている賃貸住宅」を意味しています。「テラスハウス」という別名があり、最近の長屋は外観もスタイリッシュ。古臭いスラムのようなイメージは、完全に払拭されています。ただ、昔から言われ続けている「長屋の良くないところ」はそのまま残っているため本コラムではメリット・デメリットを説明していきたいと思います。
共用部とは
アパート・マンションなどの『集合住宅』は、法律上「共同住宅」と「長屋」に区分されます。
それぞれ【共用部】の有無で判断します。
共用部とは共同で使う玄関やエントランスホール、廊下、階段などのこと。「共同住宅」にはこれがありますが、「長屋」にはこうした共用部がなく、各住戸が道路に対してそれぞれの玄関をもっています。
長屋のメリット
① 「特殊建築物」に該当しない
各個別に玄関が存在し道路に対して独立性が高いことを理由に建築基準法に定められる防火その他の規制を受けることが、共同住宅に比べ少ない。
② 「旗竿敷地」や狭小・密集地でも建てやすい
建築基準法上の規制が少ないため、変形地や狭小地の土地にもアパート・マンションが建築できる。
③ 各住戸の面積が広い
共用部分が存在しないため、プライバシーを確保しやすく、共同住宅に比べ部屋の面積がたくさん取れるため広くなる。
長屋のデメリット
① 火災時の安全性
昨今、建築技術は非常に高度なものになり、防火に対する基準も遵守されていますが、昔ながらの長屋には「一戸から火が出るとエリア全体に火が回りやすい」という危険がありました。「江戸の大火」と称される過去の大火事の要因も、このような住宅事情にあったと考えられます。
共同住宅形式のアパートで火事が出た場合、上下左右の部屋に火が回っても、建物内で収まる可能性は高くなっています。重層長屋形式でも事情は同じなのですが、東京で重層長屋が多く建設されているエリアでは「延焼から大規模な火災が発生するのでは」と危険視する声が上がり始めています。
理由として、重層長屋は、建築基準法の「特殊建築物」に該当しないため、さまざまな法規制の対象外となっています。対象外の法規制の内容は、防火基準の占める割合が大きくなっているので、特に築年数の古い昔ながらの長屋は危険かもしれないと声が上がり始めています。
「長屋だから、建築基準法を気にしなくても大丈夫」と防火対策を怠ると、いざ火災が発生した際に、大火事へと発展してしまう可能性があります。安く事業性が高いと言っても鵜呑みにせず、オーナー自身が意識を高め、プロとよく相談のうえで設計建築を進める必要がありそうです。