管理組合が危ない! | 誠和不動産販売株式会社
管理組合が危ない!
著:誠和不動産販売 2022年1月更新
著:誠和不動産販売 2022年1月更新
管理組合の前途は多難
マンション、正確には区分所有建物には、その区分所有者全員が参加する『管理組合』があります。
この管理組合は、謂わば自治組織です。
今、この管理組合の前途には様々な問題が立ち塞がっています。
マンションの一生は、
① 新築される
ピカピカの新築で、所有者もアクティブ層と呼ばれる現役世代の比率が高い。
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② 建物の全盛期
比較的活発に取引される時期。新築当時から住む住人の比率もまだ高め。
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③ 衰退期
現役世代が減少し所有者の高齢化が進行する。同時にマンション全体の『賃貸化率』が上昇する。
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④ 再生期(①へ戻る)
建替えや再開発によって生まれ変わる。※ここに至ったマンションの事例数はまだ少ない。
このようなサイクルを辿ります。
今もっとも危ないのは、③の衰退期にあるマンションです。
マンションの築年数が経過するに従って鎌首をもたげる問題『高齢化』と『賃貸化率』を、今回は読み解いていきたいと思います。
マンションの築年数経過≒所有者の高齢化
マンションの築年数経過は、即ち所有者の高齢化とイコールです。
国土交通省が平成30年に行った『マンション総合調査』に依ると、マンションの築年数が経るごとに高齢化が高まる結果が一目瞭然に見て取れます。
築30年以内のマンションでは約22%に収まっている『70歳以上の占める割合』は、築40年のマンション群では37.6%と3割を上回り、築45年を超えると半数を占めるまでになります。
60歳代を含めると、築45年を超えるマンション群では実に8割弱と驚異的な数字になります。
こうなると、何が問題になるでしょうか。
まずは、『資金の問題』です。維持管理、あるいは計画修繕に要する費用は、建物の築年数が経過するにつれて(≒古くなるにつれて)増加していく傾向にあります。この費用負担を巡って、区分所有者の間で意見が割れてしまうかもしれません。
歯に衣着せぬ言い方をしますが、この先長く住まう世代の区分所有者と70歳以上(あるいは60歳以上)の世代では、マンションの維持管理や資産性に対する熱量には、天と地ほどの差があります。長く住まう世代であれば、費用負担があったとしてもマンションの修繕や維持管理を行うモチベーションは十分持ち得ているでしょう。
しかし、自らが住まう間だけを考える世代であれば、それはどうでしょうか。
そのいずれもが、必ずしも同じ熱量は持ち合わせていないはずです。
その結果として、管理組合としての機能不全を招き、維持管理を行える範囲が限定的になり、老朽化の加速や安全性の低下・設備の破損等、様々な問題を引き起こしかねないリスクを抱えることになってしまうことは容易に想像の付くところです。
賃貸化率の上昇が管理組合の機能不全を引き起こす
管理組合の機能不全は、更に深刻な問題へ繋がります。
『賃貸化率の上昇』です。
前述の国土交通省が実施したマンション総合調査に依ると、築年数の経過したマンションは有意に『賃貸比率(マンション内の住戸に占める賃貸戸数の割合)』が高いことがわかっています。
賃貸比率が20%を超えるマンション群は、築30年を経ると急激に上昇し、築45年では3割に達する勢いです。
賃貸比率の高いマンションでは、区分所有者はそのマンションに居住していないことになります。
それが何を意味するのか。
日常的に居住していないのであれば、『自ら所有する≒管理するもの』という意識はどうしても希薄になりがちです。
自らの住まいでなければ、熱量を持って建物の維持管理や資産性の維持を考えることは難しいでしょう。
賃貸化率の高いマンションは、総会の決議に対する投票率も低い傾向にあります。
そのため、
● 規約の改正や大規模修繕 ▶ 区分所有者の4分の3の賛成を要する(75%)
● 建替えや再開発事業 ▶ 区分所有者の5分の4の賛成を要する(80%)
これらの意思決定が実現する可能性は限りなく低くなってしまうのです。
上述の『資金の問題』によってマンションの未来に見切りを付けた区分所有者が、住み替えにより引っ越して、そして空いたマンションは賃貸して貸し出す。
賃貸化率上昇の背景・根底には、そのような流れがあるのかもしれません。悪循環に陥ってしまうわけです。
また、管理規約により『そのマンション内に居住していること』を役員の要件としているマンションも多く、熱意のある区分所有者が去ることで尚のこと管理組合の機能は低下を避けられなくなります。
マンションは総体に属する資産である
マンションは、その区分所有者全てが共有する資産です。
管理組合の一員として、自らの資産の舵取りを主体的に考え行動していく。
そうあることが、区分所有者には求められます。
マンションの大規模修繕や自治規範である管理規約の改正、更には建替えを規定した区分所有法が昭和37年に施行された当時と現代とを比して鑑みるに、『区分所有者の4分の3(5分の4)の賛成』とは随分とハードルの高さを感じられずにはいられません。
つまりはそれだけの割合の区分所有者が“積極的賛成の意思表示”を行うことを求められるもので、仮に残りの4分の1(ないし5分の1)が“意思表示しない(白紙)”だけで、この決議は成立しません。区分所有者の主体性無しには成り立たないものです。
自らの、そして共同の財産の価値は、他ならぬ区分所有者自身が、管理組合の一員として関わり、維持し高めていくものです。
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