相続放棄の落とし穴 | 誠和不動産販売株式会社
相続放棄の落とし穴
著:金成 明洋 2022年1月更新
著:金成 明洋 2022年1月更新
不動産の仕事をしていると、お客様から「相続」に関わるご相談を受けるケースが多くあります。
その際に「相続放棄」に関する誤解が結構あります。
今回は相続放棄について簡単に掘り下げて説明をします。
1.遺産分割上の放棄と相続放棄の違い
まず遺産分割協議とは、相続が発生した際に、共同相続人全員で遺産の分割について協議し、合意することです。
遺産と言えば現金や不動産などプラスの財産を想像しがちですが、借金などマイナスの財産も含まれます。
例えば亡くなった方に借金など多額の負債があった場合、相続人はまず相続放棄を検討すると思います。
しかし「遺産分割協議」において、「財産は一切受け取らない」としたとしても借金の返済を免れる事はできません。
「遺産分割協議」は、どの財産を誰がどの程度取得するのかを決める相続人との話し合いでしかなく、亡くなった方の負債の行方について、相続人以外に効力を及ぼすことができません。
すなわち、亡くなった方にお金を貸していた金融機関は、遺産分割協議の内容に関わらず、相続人となった全員に借金の返済を要求することができます。もちろん相続人となっている以上、借金を返済する義務があります。
では亡くなった方の借金は相続人が必ず返済しなければいけないのかというと、「相続放棄」という方法があります。
「相続放棄」とは相続人が遺産を放棄して相続しないことを、家庭裁判所に申述して放棄することをいいます。
相続放棄をすると、放棄をした人は初めから相続人とならなかったものとみなされるため借金の返済を免れることができます。
2.相続放棄をする際の留意点
相続放棄の申請手続きは、「相続が始まったことを知ってから3ヶ月以内(熟考期間)」に家庭裁判所に申述しなければいけません。
仮に3ヶ月を過ぎてしまった場合は、単純承認といいプラスの遺産もマイナスの遺産も全て相続することになり、原則として相続放棄をする事はできません。
3.相続放棄をした後の相続権
相続をする権利は民法で優先順位が決められています。
① 配偶者 ▶ 常に相続人になる
② 子 ▶ 第1順位
③ 親 ▶ 第2順位
④ 兄弟姉妹 ▶ 第3順位
配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の方は優先順位の高い方のみが相続人となります。
例えば、夫婦と子供2人の4人家族で夫が亡くなった場合は、夫の父母や兄弟が健在であっても、妻と子供のみが相続人になります。
以上が相続をする権利についての基本的な考え方になりますが、相続放棄をした場合にこの順位がとても重要になります。
「相続放棄」の効力は民法939条で「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と明記されています。
つまり相続放棄をした方については、初めからいなかったものとして相続の順位が後順位に移ります。
もう少し具体的に説明をすると、配偶者と子が相続放棄をした場合は親に相続権が移ります。親がすでに他界していた場合は兄弟姉妹に移ります。
この様に相続放棄は連鎖するため注意が必要です。
4.まとめ
マイナスの相続がある場合、相続放棄を一度は検討すべきでしょう。
しかし、放棄することで別の人にマイナスの遺産が相続されてしまいます。したがって、関係する人全員でよく相談して決断することが大切です。
さらに、プラスの相続がある場合でも、相続放棄をしたほうがよい場合もあります。例えば、顔をあわせたくないような相続人がいる場合、お金のことで揉めるならば、いっそ相続放棄をしたほうがよいかもしれません。
いずれにせよ、そのメリット・デメリットを知ることが大切です。加えて一度決断すると後戻りできません。
相続放棄は、相続したい・したくないだけの理由で決めるのではなく、各要素をきちんと確認した上で決定することをおすすめします。
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