2017年6月9日、住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立しました。これは一体、何を目的とした法律なのかは同法に記載されています。
政府は2020年までに訪日客を現在の1.7倍の年間4000万人に増やす計画です。都市部での宿泊施設不足解消の切り札として民泊に注目していますが、これまでは国家戦略特区(大田区・大阪市)を除けば旅館業法の許可を取らなければ民泊をしてはいけませんでした。
しかし、許可を得るハードルが高かったため、無許可の違法民泊が続出、近隣住民とのトラブルが相次いでいます。このため、旅館業法より規制の緩い民泊形態として民泊を追認して訪日客を取り込むと同時に、登録や届け出を求めることでトラブル解消を狙ったわけです。
住宅用地でも「民泊」が可能に
泊新法(住宅宿泊事業法)では、民泊=住宅と位置付けられました。そのため、今まで旅館業法では商業系の地域にしか宿泊施設を作ることができませんでしたが、住宅専用地域でも民泊の営業ができるようになりました。
ただし、自治体の裁量により条例などで規制を上乗せできることから、民泊に厳しい自治体では営業が難しくなる可能性があります。
※軽井沢町は町内での民泊は一切認めない方針です。
杉並区では「民泊」条例制定へ
住宅地が区の85%超、その中でも低層住宅地が60%超と23区でも有数の住宅区である杉並では「民泊」条例制定を目指す動きがあります。具体的には、2020年までに区内に15ヵ所の「民泊」施設を、と目標を掲げています。
杉並区には区内に「機動戦士ガンダム」を制作したサンライズ等アニメ制作会社が約70社あり、サブカルチャーを特徴とした街づくりを進めています。昨年度「杉並アニメーションミュージアム」の来場者約4万人のうち、1割は外国人という結果が出ており、アニメ好きの外国人に注目されている状況もあります。一方で、杉並区は区内の民泊施設が少ないことがあり、外国人観光客増加の影響で慢性的に宿泊施設が不足している状況に拍車をかけています。
これまで「民泊」と言えば、人が集まる繁華街や交通の要となる駅や空港を擁している地域に宿泊施設の不足を補う形での利用を目指す場合が目立っていました。
杉並区のように旅行者を引き付ける魅力的なコンテンツがありながら、宿泊の受け入れが難しく他の地域に人が流れていた状況を「民泊」によって、滞在者が増えることで地域に対する新たな経済効果も期待できるものと思われます。
反面、住宅地が多い杉並区で制限なく民泊が許可されれば、不安に思われる区民も多いと思われます。現時点では条例の内容は具体的に決まっていませんが、情報が入り次第取り上げてまいります。