相続法改正-自筆証書遺言- | 誠和不動産販売株式会社
相続法改正-自筆証書遺言-
著:金成明洋 2018年6月更新
日本は高齢化社会が進んでいるため、政府は遺言書の保管などについての法案と家事事件手続法や民法の改正案を、2018年3月13日に閣議決定し、衆議院に提出しました。
多くなっている相続する際のトラブルを無くすために、自分で生前に作れる「自筆証書遺言」の保管が法務局でできる制度を設けたり、居住権を確保して残った配偶者が暮らしに困らないようにすることなどがメインです。
看護などに相続人ではない人が貢献すると、お金を相続人に要求できるようにもなります。
成立すると、相続関係の法制度についての改正としては、昭和55年以来の抜本的なものになります。
「終活」という身の周りを生前に整理するものが流行になり、自分の財産である預貯金・不動産・株式などというものを誰かに相続するなどを書いた遺言書を、相続トラブルを防止するために作る人が多くなっています。
今回は、これらの改正案・新設法案のうち、自筆証書遺言の方式緩和とその保管制度の創設について取り上げたいと思います。
自筆証書遺言の方式の緩和
これまでは、日付及び氏名を含め、その全文につき遺言者が自署することが必須要件となっていましたが、新法では、うち財産目録の部分については自署することを要しないこととされ、ワープロで作成したもの、あるいは不動産の登記簿全部事項証明書などを別紙目録として添付し、その全てのページに署名・捺印することにより、これを有効な自筆証書遺言の一部(補完書類)として許容することとされました。
本改正により、素人が書くと、しばしば記載内容の不備により、法的な要件を満たさない可能性が高かった自筆証書遺言の作成面のハードルは一挙に下がり、これまでより手掛ける方々が増えるものと予想されますが、一方で、それでも遺言者の相続発生時に検認が必要となる点、紛失の危険性が高い点など、この遺言の法的な運用・保管時におけるマイナス面がこれまでこの遺言が敬遠される原因となっていました。
今回、新設される法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設は、そうしたマイナス面に対応したもので、民法から独立した新法として「法務局における遺言書の保管時に関する法律」が創設されます。
まず、遺言者は自ら作成した自筆証書につき、遺言書保管所として指定された(住所地・本籍地・所有不動産の所在地を管轄する)法務局に対して、当該遺言の保管申請を行うことが出来ます(代理申請不可)。法務局の遺言書保管官は、所定の方法により、遺言者の本人確認を行った上で、当該申請を許可した遺言書につき、遺言書の画像などの情報を磁気ディスク等に保存しますが、遺言者はいつでも保管された遺言の閲覧を請求することが出来、同様にいつでも自らこれを撤回することが出来ます。
また、遺言者の死亡後、その関係相続人等(相続人や権利関係者、遺言書に記載された者など)は遺言書保管官に対して、遺言書保管ファイルに記録された事項を証明した「遺言書情報証明書」の交付や遺言書原本の閲覧を申請・請求することが出来ることとされています。
さらに、当該法務局に保管された自筆証書遺言については、通常、公正証書で作成された遺言書以外のもの(自筆証書遺言・秘密証書遺言)に義務付けられている検認手続きを要しないこととされました。これにより、相続時の検認、紛失の危険性といったデメリットも消滅することとなり、今後、自筆証書遺言のメリットや使い勝手は飛躍的に向上していくことになるものと予想されます。
最後に
日本人の8割が遺言書を作成していないと言われています。
理由は「縁起でもないから」という意見が多いようですが、遺言書と遺書を混同しているように思えます。
遺書は、自殺をする人が死ぬために消極的なメッセージで法的効力はありませんが、遺言書は、「大切な家族に財産を残してあげたい」や「自分の愛情を分け与える」積極的なメッセージです。
使い勝手が良くなった遺言制度を是非ともご検討ください。