相続法の改正~相続登記の重要性~ | 誠和不動産販売株式会社

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相続法の改正~相続登記の重要性~

相続法の改正~相続登記の重要性~
著:誠和不動産販売  2019年11月更新

120年振りの改正となった改正民法の施行をいよいよ2020年4月に控えていますが、その前に一足先んじて改正相続法が2019年7月1日より施行されていることをご存知でしょうか。

改正相続法で大きく変わった点は『配偶者居住権の新設』『自筆証書遺言の方式緩和』『遺産分割協議成立前の仮払い制度』などがありますが、その中でも特に影響の大きい『遺言と相続登記の関係性』についてお話致します。

 

遺言と相続登記の力関係

 

これまでの民法においては、「◯◯の不動産は兄に相続させる」という内容の遺言があったとき、相続登記をしなくても遺言の通り相続したものとされ、更にその効力は相続人のみならず第三者へも及ぶものとされていました。(最高裁判例:平成5年7月19日、及び平成14年6月10日)

 

不動産を「自分のものだ」と主張するには登記が必要です。
しかし、遺言に基づく権利の継承については、登記が無くても第三者へ対抗出来てしまう状態が続いていました。

 

登記が為されていない不動産は権利関係が非常に危うい状態にあります。
相続登記は、法定相続分に関しては単独で登記が出来ます。
相続人でありながら遺言によって不動産を相続出来なかった弟が、自分の相続分を単独で相続登記した上で第三者に売却したとします。今までの相続法では、兄が遺言による登記をしていなくとも、第三者に対して自分のみが権利者である主張をすることが出来ました。弟から持分を購入した第三者は、取引が無効とされ持分を返さなければなりません。

 

このように、第三者からすると遺言を盾に後から取引をひっくり返される恐れがあり、何を信用して良いのかわからない点は非常に問題であると言えます。何ら落ち度のない第三者の権利・利益のみならず、引いては登記制度そのものの信用度が大きく揺らぐことになりかねません。

 

 

 【重要!】今回の改正では                               

 

   今回の改正ではこの取り扱いが改められ、遺言によって『法定相続分を超える』不動産を相続した場合でも、
   相続登記をしない限り第三者へ対抗することが出来なくなりました。

   遺言によって不動産を相続したとき、遺言書があれば心配無い時代は幕を閉じたのです。

 

 

遺言に拠る相続登記をしないとき、どのような事態が起こり得るでしょうか

 

兄が遺言によって実家(土地・建物)を相続したとします。不動産を相続できなかった弟は面白くありません。
そこで、3年後に自分の法定相続分を一人で登記し、その持分を第三者である不動産業者へ売却しました。
数年後、兄のもとに不動産業者がやってきて不動産の分割請求を突きつけてきました。

 

今までは、兄は遺言を盾に自分が相続人であることを主張して数年前の弟の登記を無効とすることができましたが、改正相続法では法定相続分を超える部分は相続登記が為されていなければ第三者には対抗することが出来ません。
裁判所へ分割請求の訴えが起こされ、物理的に分割が難しい場合や持分を買い取る金銭を準備出来ずに競売になってしまったとき、兄は不動産を失ってしまうことになります。

 

これはあくまで例え話ですが、現実に起こり得る、そして起こっている話です。
この背景には、かつてない程の高齢化社会を迎えた我が国において、既に2016年時点で全国に410万ヘクタールにも上る相続登記未了による所有者不明土地の増加抑制・解消が喫緊の課題であることが挙げられます。

 

対策をしない場合、2040年には北海道にも匹敵する720万ヘクタールになると予想される所有者不明土地が齎す経済的損失は累計6兆円に達するとの試算もあり、既に大都市でも空家が顕在化している今だからこそ手を打たなければならないとの危機感が政府にはあるのでしょう。

 

今後の展望

 

この相続法改正の先には、2020年に法務省が通常及び臨時国会へ提出を検討している『相続登記の義務化』と『遺産分割協議成立期限を10年にする』2つの改正があります。
所有者不明土地の発生源の大半が相続登記未了に拠るものであることを鑑みると、遺言あるいは法定相続のどちらであっても相続登記を義務化することで土地所有者を特定し、円滑な土地利用・流通の促進を政府が主導することが望ましいと言えます。

 

また、そもそも相続登記が完了しない原因として、相続人同士で遺産分割協議がいつまでも整わないケースも無視できません。
今までは期限が無かったことからいつまでも揉め続けてしまい、結果相続登記がされずに所有者不明の状態に陥ってしまっていましたが、これに関しても期限を切ることで権利関係を確定させられることから、土地利用・流通の円滑化に大きく寄与するものと思われます。

 

民法も相続も、時代・社会の実態に即して変化を続けていくでしょう。
永続した事実関係を尊重する民法では、権利の上に眠る者は救済されません。
遺言書が葵の印籠となる時代は終焉を迎えました。

遺言によって不動産を相続した方は、速やかな相続登記手続きが不可欠となります。
 

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