いよいよ民法改正が目前に~瑕疵担保責任は契約不適合責任~ | 誠和不動産販売株式会社
いよいよ民法改正が目前に~瑕疵担保責任は契約不適合責任~
著:誠和不動産販売 2019年12月更新
2020年4月より、いよいよ改正民法が施行されることになります。
実に120年ぶりとなる改正は、私達にどのような影響を及ぼすでしょうか。
不動産の世界においては、
① 売主の責任の明確化
② 買主の請求できる範囲は拡大
この2点が取引の現場において大きな変更点となります。
そもそも今回の民法改正は、従前の民法の原典となった「大陸法(シビル・ロー)」からの脱却を目指し、時代の潮流に合わせることを大きな目的としています。
大陸法(シビル・ロー)とは?
● 社会において一般化したルールから見て、契約内容や契約違反について判断する。
● もともとはローマ法に由来し、多種多様な人間で構成される社会において一般化した規範(所謂「常識」)が個々の契約を解釈する。
● 責任の根拠は、社会規範から見て免れない責があるか否かに拠る。
この大陸法は、同じ社会規範をベースに持つ文化圏であることを前提にしています。
しかし近年はグローバル化によって国家・文化の境界線は急速に近付き曖昧化し、それぞれが持つ「社会規範」が噛み合わないことによる弊害が大きくなってきました。
そこで、社会規範をベースにした大陸法から個人間の合意を重視する「英米法(コモン・ロー)」へと転換することによって、特に昨今の海外企業との取引増大や経済発展をより促進すべく、その法体系に近づけるための改正が行われました。
英米法とは?
● 個々の契約当事者の合意それ自体を重視する。
● 11世紀にイングランドに端を発し、ローマ法から隔絶した世俗法として進化した歴史を持つ。
● 債務を引き受けたか否かを責任の根拠とし、契約自体の有効性を尊重する。
この改正が不動産の実取引へ及ぼす影響を見てみましょう。
一番大きく影響を受けるポイントは、これまで「瑕疵担保責任」と言われていた事柄が「契約不適合責任」へと代わる点です。
現行民法下において瑕疵担保責任を免責とすることもよく見受けられます。
社会規範から見て、それが認められているからです。
しかし、日本の社会規範の外側にいる立場の人には、この概念が理解されないことのほうが圧倒的に多いでしょう。
不動産に限った話ではありませんが、今後グローバル化はますます進み国際取引も増えてくると、日本という社会のみで通用する規範を基にした契約は火種を抱えることになり、契約を巡る紛争が爆発的に増加することは想像に難くありません。
そのため、社会規範に代わり当事者の合意を基準とすることで、契約に対して適合しているのか、それとも不適合なのか、そのような視点で責任の所在を明確にするよう改められました。
今後は「瑕疵担保責任」という概念が消滅し、同時に「免責」がそもそも契約として不適格であるとされるようになります。
売主の責任が明確にされたことで、特に不動産においてはその状態を詳らかに情報提供することが今後はより一層重要になるでしょう。また、買主の請求権も大幅に拡張されました。
改正民法のうち、代金減額請求と追完請求については「契約に適合していることを求める」ためのものです。
■ 代金減額請求 適合する状態にするために必要な費用分を減額請求する。
■ 追完請求 「追」って契約に適合するよう「完」成させることを請求する。
売主の立場では、土地はもちろんのこと、住宅の場合は「建物インスペクション」を活用しその状態を明らかにすること、情報を包み隠さず相手方に提供し合意を形成することで将来の火種を防ぐ必要があります。
また、『当事者の合意を重視する』という法体系に基づくことにより以下の点が改正されました。
【 原始的不能 】
契約締結時に既に目的物が消滅している場合、現行民法には条文による規定がありません。
これまでは解釈によって「債務は当然に消滅する」(無くなっている物は渡せないので当然そうなる)とされてきました。
改正民法ではこの点が条文に明記され、当事者の合意があることから契約そのものは有効であるとされます。契約は有効であり債務は当然消滅しないことから、原始的不能の場合は契約の解除が争点になり、その責務は損害賠償を以って争われることになる点は注意が必要です。
【 危険不能 】
契約締結後の目的物の滅失・毀損は、これまでと同様に当事者双方に責が無い場合は契約解除によって処理されることになります。
また、改正民法においては(売主の責めに帰す事由が無いことを前提として)売主から契約の解除を取り得るようになりました。
※改正民法第536条抜粋「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、
債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」
↓
現行民法においては「債務者は、反対給付を受ける権利を有しない」と受動的な規定に留まっていましたが、
改正民法では売主にとっての反対給付(≒目的物の引渡)を能動的に処理できる選択肢が出来たということです。
時代は変わり、法律は変わり、不動産を取り巻く状況も刻々と変化します。
不動産の契約は些細な行き違いから大きな揉め事に発展することもあり得ます。
民法に限らず多種多様な法律と直接触れ合う機会は決して多くはありませんが、変化に合わせて最適な対応が取れるように変わることは、この先より重要なスタンスとなってくるでしょう。