定期借家契約のすすめ | 誠和不動産販売株式会社
定期借家契約のすすめ
著:金成明洋 2020年1月更新
2000年3月1日に施行されて以降、定期借家契約は全物件契約のうち3%程度しか利用されておらず、賃貸オーナーの間でも理解が進んでいるとは言えません。聞いたことがあっても「契約更新ができないからその分賃料が下がる・・・」というイメージを持っている方も多いように思えます。
しかし、「契約期間が終了しても再契約する」ことを前提とした定期借家契約が出てきていることはご存知でしょうか?
今回は、正確に認知されていない「定期借家契約」のメリットについてご紹介します。
定期借家契約のメリット
1.定期借家契約には更新時の正当事由が不要です。
普通借家契約の場合、契約期間満了時に貸主から更新を拒絶するには、正当事由が必要となります。
これを「正当事由制度」といいます(借地借家法第26条に規定)。
一方、定期借家契約では、契約期間満了により確定的に契約が終了します。したがって、正当事由の有無は問われません。
契約期間が満了し、その物件を引き続き貸し続けたい(借り続けたい)場合、定期借家契約では、貸主・借主が合意の上、再契約をすることになります(新たな契約が開始されるということになり、「更新」とは異なります)。
2.定期借家契約には立退料が不要です。
上述のとおり、定期借家契約には、正当事由の有無は問われません。
したがって、当然のことながら正当事由を補完するための立退き料の支払いもない、ということになります。
3.不良入居者を退去させることができます。
賃貸借契約で取り決めた内容が守られない場合(例えば、長期間の賃料滞納等)、契約を解除するには、貸主と借主の間で信頼関係が破壊されたと認められない特段の事情がある事を貸主が立証しなければなりません。それぞれの事案に応じて裁判所が判断することになり、明確な基準(例えば3ヵ月の賃料滞納で必ず契約解除できる等)があるわけではありません。
期間満了により確定的に契約が終了する定期借家なら、「契約内容を守らない借主とは再契約しない」といった運用により、安定した賃貸経営に役立つことができます。
定期借家契約の流れ
①契約締結にあたり、貸主は借主に対し、「この賃貸借は更新がなく、期間の満了により終了する」旨を(契約書とは別に)書面を交付して説明する必要がある(宅地建物取引業者が仲介する場合、この書面を貸主に代理して交付・説明するケースが多い)。
②契約締結にあたり、宅地建物取引業者が仲介する場合は、別途、宅地建物取引業者は宅地建物取引業法の規定に基づき、重要事項として説明する義務がある。
③必ず書面により契約書を作成する必要がある。
④借主からの中途解約
床面積が200㎡未満の居住用の建物については、借主が、転勤、療養、親族の介護等やむを得ない事情により、建物を生活の本拠として使用することが困難となった場合には、借主から中途解約の申入れをすることが可能であり、申入れの日から1か月後に賃貸借契約が終了する。
⑤定期借家契約の期間が1年以上の場合、貸主は借主に、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、「期間満了により賃貸借契約が終了する」旨を通知する必要がある。
従来の借家契約との比較
■ 定期借家契約と従来からの借家契約(普通借家契約)との比較
まとめ
法施行後20年近くの月日が経過していますが、未だに普及しているとはいえない定期借家契約。
借主の立場で考えた場合は、是非とも活用して欲しい契約形態といえます。
定期借家契約の導入をご検討のオーナー様はご説明致しますのでお気軽にお問い合わせ下さい。