五輪ブーストとコロナブレーキの相互作用について | 誠和不動産販売株式会社
五輪ブーストとコロナブレーキの相互作用について
著:誠和不動産販売 2020年7月更新
2020年という年は、中国・武漢に端を発する新型コロナウイルスに始まり、その悪影響から逃れ得ないまま、その半分が過ぎ去ろうとしています。本来であれば、7月に開催される東京オリンピックに向けて我が国全体が大いに盛り上がっていたはずです。
しかしながら、当初の見通しとは裏腹に感染流行は世界中に拡大してしまい、ついには東京オリンピックの1年延期という事態になってしまいました。
東京オリンピックに向けて、不動産市場が活況であったことは周知の事実です。
この『オリンピック延期』と『新型コロナウイルスの感染流行』は経済情勢に、特に不動産市場にどのような影響を及ぼすでしょうか。
オリンピック特需なるもの
オリンピックの開催都市は、社会インフラ整備への投資拡大や建築・建設需要の増大から、不動産市場にも多大な好景気をもたらします。
これは過去にオリンピックを開催した各都市にも見られますが、データを見てみると、オリンピックの開催前年までの住宅価格の上昇率はそれほど目立ったものではありません。
左記のグラフからは、シドニー(2000年夏季オリンピック開催)もロンドン(2012年夏季オリンピック開催)も、開催年ではなくその後から大きく伸長しています。オリンピックを契機として整備された社会インフラ・各施設や設備が都市の価値を押し上げたことで、都市への居住ニーズが高まったことが理由と言えるでしょう。
東京オリンピックが1年延期されたことで、この上昇タイミングが確かに1年後ろ倒しになりました。一方で、東京においてはオリンピック開催のかなり前から住宅価格は上昇を続けています。これは、オリンピックとは関係の無い『東京への住宅需要』が既に存在しているからに他なりません。住宅価格の上昇要因が別のところにあるため、オリンピックの延期が需要の後ろ倒しに必ずしも繋がるわけでは無いことには注意を払う必要があります。
また、このグラフはもうひとつの傾向を示唆します。不動産市場にはおいては、予てよりオリンピック後に相場が急落する予想が実しやかに囁かれていますが、このデータを見る限り他都市においてそのような傾向は現れていません。少なくとも、オリンピックが1年延期されようがされまいが、住宅価格を下落に転じさせることは考えづらい、ということが言えます。
新型コロナウイルスの影響
もうひとつ、今後の不動産市場に大きな影響を及ぼすであろう要素が『新型コロナウイルスの感染流行』です。
言うまでもなく、都市封鎖・国境閉鎖まで引き起こした厄災は経済の停滞をも巻き起こしています。経済の停滞が不動産の市場に波及するには時間がかかることは周知の事実で、直近ではオフィス・テナント需要や賃貸需要には影響が出ていますが、住宅価格への大きな下げ圧力は現時点では未だ出ていません。
この要因については、前例が見当たらない為にその影響について現時点で正確に断じることはとても難しいものです。長引けば長引くほど経済へのダメージは蓄積していき、いずれは不動産市場もその影響から逃れることが出来ません。
オリンピックが延期された今、そして人的・物的交流が阻まれている今、不動産の市場を活性化させる要素が乏しい現実が、ここにはあります。少なくとも、この1年間は新型コロナウイルスの影響がじわじわと浸透してくることでしょう。
1年後にオリンピックが無事に開催されたとして、データでは上昇局面に入る住宅価格の推移が不動産市場をどのように牽引するか、言わばオリンピック特需なるものがどこまで新型コロナウイルスに拠る経済停滞に抗しきれるか。
長いトンネルを一日も早く抜け出せることを期待したいものです。