固定資産税・都市計画税の制度と仕組み | 誠和不動産販売株式会社
固定資産税・都市計画税の制度と仕組み
著:金成明洋 2021年7月更新
東京23区の場合は毎年6月初旬に都税事務所から「固定資産税・都市計画税納税通知書」が皆様のお手元にも届いているとかと思います。
令和3年は固定資産税・都市計画税(以下「固都税」という。)の3年に1度の評価替えをする年ですが、コロナの影響で地価上昇地域でも1年間税額を据え置きとなりました。
今回のコラムでは固都税について少し掘り下げて解説します。
1. 固都税を控除できる「住宅用地の特例」
住宅用地は人が居住するための用途となるため、住宅用地には特例措置が設けられており、税負担が軽減されています。住宅用地に適用される軽減措置は「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」という2種類の用地によって分かれます。
下表の「課税標準額」は税金の計算の基礎となる金額であり、特例が適用されると下記の通り軽減されます。
不動産の評価は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて行われ、市町村長(東京都23区内の場合は都知事)が価格を決定することになっています。また、一部を店舗や第三者の居住用として提供している併用住宅は、計算方法が異なります。
なお、住宅用地とはアパート・マンション・戸建て物件等で居住用の建物の総床面積の10倍までの土地を指し、建物の敷地だけではなく、駐車場や庭も含まれます。
2. 新築住宅に関する固定資産税軽減の特例
住宅を新築した場合、新たに固定資産税が課される時から中高層耐火建築物等(3階建て以上)の場合は5年間、その他の建物は3年間120㎡までの部分が1/2軽減されます。
なお、この特例は4年目(マンション等の場合は6年目)から固定資産税の額が元に戻り、適用されるのは令和4年3月31日までに建築された物件に限られています。特例の適用を検討する際は注意しましょう。
3. 長期優良住宅は更に税金が軽減
構造や設備等が優れており、長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた住宅で国土交通省に「長期優良住宅」として認可を受けた場合、住宅ローン減税による控除額が通常の住宅より多くなり、登録免許税や不動産取得税、固定資産税が軽減されます。
4. 固都税、相続税が控除できる土地の有効活用
マンション・アパート等の賃貸経営
相続税対策として最も控除額が大きくなる可能性の高い土地活用は、賃貸経営です。
木造のアパートや鉄筋コンクリート造のマンションを建て、第三者に貸し出すことで収益を得る仕組みになっています。
新たに建築した住宅は「新築住宅に関する固定資産税軽減の特例」で一定期間固定資産税が軽減されます。「住宅用地の特例」や「相続税評価減」「小規模宅地等の特例」も適用される可能性があります。
しかし、マンション・アパート経営を始める前に調べておきたい事は、周辺地域の賃貸ニーズや家賃の相場からシミュレーションを作成し、「事業として成り立つか」という点です。
想定した賃貸ニーズが獲得できなかった場合、空室が増え、控除される税額よりも大きな損失が出てしまう可能性もあります。事前に調査を行い、投資判断は慎重に行いましょう。
戸建て住宅の賃貸経営
戸建て住宅の賃貸経営は、被相続人の住居を相続した場合にリフォーム・リノベーションを行い第三者に貸し出すケースと、新たに戸建て住宅を建築して貸し出すケースがあります。
これら二つどちらの場合も住宅用地となるため、アパートやマンションと同様に「相続税評価減」「住宅用地の特例」、「小規模宅地等の特例」が適用される可能性があります。
新たに戸建て住宅を建築する場合、マンション・アパート等より初期費用が安く、ファミリー層からのニーズが見込めます。「新築住宅に関する固定資産税軽減の特例」も適用される可能性があります。
一方、被相続人が住んでいた建物を転用する場合、築年数が経過した物件はリフォーム・リノベーションが必要なケースがあります。
しかし、戸建経営の場合であっても初期費用が高額になるケースは少なくありません。また、戸建が建てられる住宅地は賃貸ニーズが減少しているエリアも多く、賃貸経営を始めても供給過多になっている可能性もあります。
戸建経営の場合も、周辺エリアのニーズ調査や経費、ローンの返済額などから長期的なシミュレーションを作成し、慎重に判断することが大切です。
駐車場経営
駐車場経営は上に挙げた賃貸経営より低リスク・低リターンの活用方法となります。
駐車場には月極駐車場とコインパーキング(時間貸し)駐車場の2つの経営方法があります。月極・コインパーキング共に地域によってニーズが異なりますので、「まずは収入が安定した月極から始めて、需要が少ないようであればコインパーキングに切り替え」といった方法からスタートするケースもあります。
駐車場経営は少ない初期費用で始められますが、住宅用地ではないため、賃貸経営のように住宅用地の固定資産税・都市計画税の軽減がない点に注意しましょう。
なお、相続税に関する「小規模宅地等の特例」は、駐車場の敷地上に構築物(アスファルトや砂利、機械式)構築物がある場合は特例の適用できる可能性があります。特例が適用されると、200㎡まで50%減額されます。
5. まとめ
アパート・マンション等の集合住宅の経営、戸建て住宅の賃貸経営、駐車場経営と3つの活用方法をご紹介してきました。どの活用方法を選ぶ場合でも、ニーズ調査を行い、その土地に合った活用方法を優先的に検討することが大切です。
税金の控除や軽減のみを見て経営を始めると収支が合わず、税金の控除額よりも大きな損失を生んでしまう可能性があります。ニーズ調査を事前に行ったうえでシミュレーションを作成し、慎重に判断してみましょう。
なお、どちらも同程度のニーズが見込めるエリアと仮定した場合、駐車場・駐輪場経営は賃貸経営よりも初期投資額が少なく済み、運営の手間が少ないというメリットがある反面、税金の軽減率やリターンが低いというデメリットがあります。
一方、賃貸経営は税金の軽減・控除の効果が高く、多くのリターンを得られる可能性があります。ただし、投資金額が高額となることや、周辺エリアの賃貸需要が減少してしまうと大きな損失を出してしまうリスクがある点はデメリットと言えます。
それぞれのメリット・デメリットを比較し、自身の投資目的に合った手段を選択することが大切です。