1つの不動産に4つの価格? | 誠和不動産販売株式会社
1つの不動産に4つの価格?
著:金成明洋 2017年4月更新
私たちが普段買う物には価格がついています。当たり前ですが、お金を出すことで物を買うようにするためです。土地も売買するものですから、当然ながら価格が付きます。ただし、株式や金などの投資商品と異なり、まったく同じものは世の中にはありません。そのため、土地に関してはどう価格をつけてよいか難しい点があります。といっても、売りたい人も買いたい人も価格が決まらなければ売買が成立しません。
そこで、土地に関しては様々な目的に応じて目安となる価格が複数付けられています。実際には一物四価といわれ、目的に応じて一つの土地に公的に算定された価格と実際に売買する価格の4つが付けられているのです。
今回はこの一物四価について解説します。
4つの価格とは
一物四価の4つの価格とは、「実勢価格」、「公示地価」、「固定資産税評価額」、「相続税路線価」が該当します。このうち公的価格は、「公示地価」、「固定資産税評価額」、「相続税路線価」が該当しますので、まずはこの3つについて解説します。
公的価格の解説
まず「公示地価」とは、一般の土地取引価格の指標となるものであり、国土交通省により公表されます。全国における主要な地点である約2.3万地点で、毎年1月1日時点の更地としての価格を鑑定し、3月中旬頃に公表されます。銀座の山野楽器前が1坪4千万円超というようなニュースが公表されるのは、この公示地価によるものです。※本コラム作成時点では平成29年公示地価が発表されておりません。
次に「固定資産税評価額」とは、固定資産税や不動産取得税、登録免許税など不動産関連の税金の計算の基礎となる価格になります。全国のほとんどの土地が対象となっているため、毎年ではなく、3年に1回(3年おきの1月1日時点)価格が更新されます。なお、3年間の間に、大きく価格が変動している場合には、修正が加えられることがあります。また、原則としてその土地・建物の所有者、借地人、借家人のみが知ることができる価格であり、固定資産税評価額は公示地価および基準地標準価格の70%を目安に決定されています。毎年土地や建物の固定資産税を支払っている方は、市町村から届く納税通知書をご覧になっていただくと、どの位の評価金額であるのかがわかるようになっています。
最後に「相続税路線価」とは、土地の相続税や贈与税の計算の基礎となる価格が該当します。毎年1月1日を基準日として、国税庁が7月初旬頃に公表します。相続税路線価は、土地全体の価格をさすものではなく、道路に価格が付きます。所有地に接している道路に付いた価格に、土地の面積を掛け合わせることで、相続税を計算する際の評価額を求めることができます。公示地価の80%を目安に決定されています。
実勢価格の解説
上記の公的な土地価格は、あくまでも土地取引の目安に使われるか、税金の計算の際に利用されるものになります。実際の売買における価格とはまた異なるのです。土地売買は原則その時の時価をもとに行われます。つまり、買いたい人と売りたい人が合意すれば売買が成立することになりますので、その合意した価格が時価に該当します。これを通常「実勢価格」と呼んでいます。
なお、あくまで取引がなされた金額が実勢価格になるため、不動産広告に掲載されている販売価格が実勢価格となるわけではありません。高すぎれば取引は成立しないためです。売主が希望する売却価格をもとに広告に価格を載せることは自由ですが、あまりにも通常の取引とかけ離れた価格を載せても売れなければ意味がありません。そのため、実際には周辺の取引事例なども参考にしながら、取引が可能な売却金額を見積もっていくことになります。
以上、一物四価について解説してきました。価格が異なるのは利用目的が異なるからです。ご自身の目的に応じて、それぞれの価格を利用、参考にするようにしてください。