契約不適合責任と中古戸建の流通 | 誠和不動産販売株式会社
契約不適合責任と中古戸建の流通
著:誠和不動産販売 2021年4月更新
売主や請負人は、売買契約や請負契約の内容に適合した目的物を、買主や注文者などの相手側に引き渡す義務を負っています。
「契約不適合責任」とは、これらの契約において売主や請負人が相手側に引き渡した目的物が、その種類・品質・数量にかかわらず「契約内容に適合していない」と判断された場合、売主や請負人が相手側に対して負う責任を意味します。
契約不適合責任での注意点
売り主はどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
契約不適合責任では、買主の請求できる権利が増えています。瑕疵担保責任では、「契約解除」「損害賠償請求」の2つにとどまっていましたが、契約不適合責任では「契約解除」「損害賠償請求」の他に、「追完請求」「代金減額請求」「無催告解除」「催告解除」が可能です。
追完請求
契約の内容に適合しないときに買主が請求します。建物に不具合があったのに、契約内容にその旨の記載がなければ、買主は契約後に売主に不具合を補修請求ができるようになります。以前の瑕疵担保責任では、不具合を知っていたかどうかが争点になっていましたが、今後は契約の内容に記載がなければ、直ぐに請求できることになります。
代金減額請求
代金減額請求とは、契約の内容に適合していないとき、追完請求を求めることができない場合に行使できるものです。
そのため、はじめに追完請求を行い、無理な場合は減額請求などをするという流れです。
損害賠償請求
損害倍書および契約の解除(次項)は特別の法廷責任とは位置づけられず、債務不履行の一般的な原則にのっとって履行できます。代金減額請求で処理しきれない事案の場合に選択されます。
無催告解除
契約の内容に適合しないことで、契約の目的を達成できないときは無催告解除ができます。こちらは、目的を達成できないときに限り行使される権利になるため、多少の不具合で補修できる場合は認められないものになります。
催告解除
追完請求をしたにもかかわらず、売主側が応じないときに行使できる権利です。減額請求では買主が納得できないなどのときに、契約自体をなかったものとすることができます。
不動産の売買では、設備に関するものも責任の対象になります。
とはいえ、中古住宅で既存の設備をそのまま利用する場合、不具合のリスクは高くなってしまいます。このような事態を避けるため、設備に関しては契約不適合責任を負わないことを契約書面に記載することが大切です。これは、追加記載しなければならない事項となり、十分に注意が必要です。
契約不適合責任への改正にあたり、従来の瑕疵担保責任で認識されていた「隠れた瑕疵」という概念は消失します。そのため、売買時に目的物である不動産(建物、土地)の原状を売主が細部まで把握しておくことが大切になります。
今後の売買契約で重要なことは、売買の目的物の現状を把握し、その内容を契約書等にしっかり記載することです。瑕疵があったこと自体ではなく、「契約書等に記載されているか」がポイントになります。目的物になんらかの不備があったときには、どのような不備があり、その不備に対して責任は負わない旨を契約書に詳細に記載することが求められます。
契約不適合責任では、従来の「瑕疵」に限らず「契約の内容に適合しないもの」という部分が重要になります。契約時にきちんと記載されているかが非常に重要になることを意味します。売主は、契約書はもちろん、その他の添付資料等にもすみずみまで目を通し、売買の目的物の現況を細かく記載することが大切です。また、売買の手続きは不動産会社に任せているからと契約内容のチェックを怠らないようにしましょう。
原状確認には「インスペクション」
契約不適合責任は、売主がどれくらい現状を把握できているかが重要であることをお伝えしてきました。
既存住宅は維持管理の状況や経年劣化の条件によってその品質等に差が生じるため、買主は不安を感じてしまいがちです。しかし、売主自身が物件の詳細な部分まで把握するのは難しいと考えられます。既存住宅の床下や屋根まわりなどは容易にチェックできるものではありません。そこでおすすめなのが「インスペクション」の活用です。
インスペクションとは、建物の柱や基礎、壁、屋根、構造体の強度や雨水の浸入が起きていないか、危険性がないかなどを第三者が判断する調査です。売主・買主ともに安心して取引できるよう、インスペクションの活用を契約書に記載することで、売買の目的物の信頼性は高まります。
まとめ
現在中古戸建の流通が多くなっているように見受けられます。
恐らくテレワークの普及により、手狭になり、住替えを検討される方が増えたからと予想します。
今回の法改正は、買主側に有利になったといわれていますが、請求できる権利が増えたからといって安心はできません。売主、買主ともに契約不適合責任について理解し、契約書をしっかりとチェックしておかないと思わぬトラブルに繋がる可能性もあるということを覚えておきましょう。
一方、売主は正直負担や責任が重くなりますが、売却後の責任の範囲を考えて、適切に責任を負う期間制限などをしておくことが現時点での対策になります。売主も買主も今回の法改正に関して「知らなかった」では済まされません。
円滑な取引を行うためには、双方がしっかりと契約不適合責任の内容を理解しておくことが重要だと思います。