民法改正 遺産分割協議の期限が10年? | 誠和不動産販売株式会社
民法改正 遺産分割協議の期限が10年?
著:金成 明洋 2023年10月更新
著:金成 明洋 2023年10月更新
1. はじめに
令和3年4月に「民法の一部を改正する法律」が成立し、令和5年4月1日に施行されました。
改正民法では、遺産分割協議に関して、特別受益と寄与分の主張をすることができる期間を相続開始の時から10年とするという内容の期限が設けられることになりました。10年を経過してしまうと、本来主張できるはずの権利を主張することができなくなってしまいます。そのため、長期間遺産分割をせずに放置しているという方は、早めに遺産分割の手続きを進めていかなければなりません。
2. 遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった方)の遺産について、誰が、どのような遺産を、どのくらいの割合で相続するかを話し合う手続きです。被相続人が遺言書を作成せずに死亡した場合には、被相続人の遺産は、法定相続人の法定相続分に応じた共有状態となります。共有状態のままでは、遺産である預貯金の払い戻しをすることができず、不動産の活用も困難になるなどの弊害があることから、遺産分割協議によって遺産分割方法を話し合うことになるのです。
各相続人が遺産について共有持分を有することになるため、遺産分割協議を有効に成立させるためには、すべての相続人の合意が必要になります。したがって、相続人が一人でも欠けている場合には、遺産分割協議は原則として無効になってしまう点に注意が必要です。
なお、遺産分割協議には期限は設けられていません。
3. 寄与分とは
相続人が被相続人の財産の形成に貢献をしたと認められる場合に、その相続人の法定相続分を増額する制度です。
例えば、被相続人の事業を手伝ったり、資金を援助したり、被相続人の介護をしたり、生活費を渡していることなどが「財産の形成に貢献をした」ことに該当します。生前に被相続人に対して貢献していたことに対して考慮するものです。被相続人の子どもであれば本来は均等に財産を分けることになりますが、子どもの間で貢献度に差がある場合、全員が同額の相続財産を得るのは公平とは言えません。寄与分は、こうした不公平感を解消するものです。
4. 特別受益とは
被相続人(亡くなられた方)から相続人への遺贈や生前贈与により、特別な利益を受けたことをいいます。
例えば、被相続人から生前に住宅資金を受け取っていれば、生前贈与による特別受益を受けたことになります。このような場合に相続時の財産のみで遺産分割を行うと、生前贈与を受けていた相続人と、何も受け取っていない相続人との間に不公平が生まれてしまいます。その不公平を解消するため、生前贈与を受けていた相続人の法定相続分を減額する制度です。
5. 期限が10年に定められた意図
改正前民法では、特別受益や寄与分を含む遺産分割協議に期限が設けられていなかったこともあり、遺産分割を放置していたとしても相続人には不利益が生じませんでした。そのため、「他の相続人との話し合いが面倒」、「遺産分割の手続きに費用がかかる」などの理由で、遺産分割協議をすることなく長期間遺産分割を放置している事案も多く存在していました。
しかし、遺産分割協議を長期間放置していると、次々に代替わりが進み、いざ遺産分割協議をしようとしても誰が相続人であるかわからず、遺産分割協議に困難が生じてしまいます。また、登記簿上の不動産の名義人と実際の所有者(相続人)とが異なるため、所有者不明の土地が増加するなどの弊害が生じています。
そこで、特別受益および寄与分を主張する期限を相続開始の時から10年とすることで、実質的に遺産分割協議に期限を設けることとして、これらの問題を解消しようとしているのです。
6. その他遺産分割に関する代表的な民法改正
(1) 所在等不明共有者の持分の取得 ※令和5年4月1日施行
(2) 相続土地国庫帰属制度 ※令和5年4月27日施行
(3) 相続登記の申請義務化 ※令和6年4月1日施行予定
(4) 住所変更登記の義務化 ※令和8年4月までに施行予定
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