暦年贈与が廃止の可能性!? | 誠和不動産販売株式会社
暦年贈与が廃止の可能性!?
著:金成明洋 2021年10月更新
昨年の12月10日に令和3年度税制改正大綱が発表されましたが、その中にとても重要な記述がありました。
令和3年度税制改正大綱(抜粋)
「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。」
要約すると「もっと公平に贈与税・相続税を課税したい」という内容と言えます。
現行制度概要
贈与税
現在の贈与税では、「暦年贈与」といって年間ベースで贈与税の算定が必要となっています。そして贈与税は相続税よりも税率が高く生前贈与をしたくても多額には出来ず、資産移転が進みにくい状況であります。
ただし、年間110万円までは贈与しても贈与税が課税されません。そのため、この110万円の無税での贈与を用いて少しずつ生前贈与して相続税の負担を軽減する相続税対策が大いに用いられております。
相続税
相続税側では相続税を計算する上での故人の財産に「生前贈与加算」といって死亡前3年以内に故人から相続や遺贈により財産を取得した人が贈与を受けていた場合、その方の相続税課税価格に贈与額を加算する規定があります。従って、亡くなる3年前から上記の無税の範囲内で贈与した金額も相続財産に含まれることになり、相続税が課税されることになります。
暦年贈与が廃止?
国は税制の改定・策定にあたり諸外国の税制を参考にしています。今回の記述の中ではその点が大きくかかわってきます。
諸外国では、上記の「生前贈与加算」の年数を3年前ではなく10年前(ドイツ)、15年前(フランス)となっており、さらにはアメリカではそもそも暦年贈与の無税枠も無く全ての生前贈与分を相続時に加算する制度となっています。
これにより、資産の移転のタイミングに関わらず、税負担が一定となり意図的な租税回避も防止されるように工夫されています。
今回の記述の内容から以下の2点が想定されます。
① 暦年課税制度の廃止(すべての贈与額は相続時に相続財産に含めて税金が課税)
すなわち、110万円の無税枠が無くなる可能性があります。
② 生前贈与加算の年数の引き延ばし(3年前という年数を5年・10年・15年と伸ばして暦年贈与の利用制限をする)
こちらも結果として110万円の無税枠の使用制限がかかります。
では、いつからかというと現在はまだ検討段階ですが、令和4年度税制改正で出てくる可能性があるため、早くて令和4年4月1日以降の贈与・相続からかもしれません。
対応策は
改正は遡って課税強化されることは考えにくいため、今年中に子供や孫に対して無税の範囲内でも最低税率である10%の範囲内でもいいので有利な範囲で暦年贈与をされたほうが良いかもしれません。